こまだこまのロバの耳ブログ

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【鳥取】「腐る経済」って?搾取しない経営で豊かな暮らしを築く「タルマーリー」

 鳥取に帰省した際、智頭町というところになんだかおもしろそうな、ビールが飲めるパン屋さんがあるってことで行ってみたのが『タルマーリー』。

www.komadakoma.com

 

 

そしてこのお店のオーナーである渡邉さんの著書、

『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」~タルマーリー発、新しい働き方と暮らし~』も、興味深く読んだ。

 

 

 システムの「外」へ

渡邉さんは、30歳で大学を出て有機農産物の卸販売会社に就職するも、会社のあまりのブラックさに嫌気がさし、

「小さくてもほんとうのことがしたい」と、ある出来事をきっかけにパン屋になることを決意。

 

31歳で、修行のためにパン屋で働くが、そこでも毎日15時間にもおよぶ長時間労働と、「天然酵母」と偽装表示をしている店の現状を知る。

 

僕はそもそも、資本の論理で不正がまかり通るのがイヤで、会社を辞め、「外」の世界に出ようとしてパン職人の修行をした。けれども「外」の世界であるはずのパン屋の工房もまた、経済システムの「まっただ中」にいることを思い知らされるような環境だった。

そしてやっと、自分の店を持ち、「外」の世界に出られると思った矢先、そこには資本の世界市場という、さらに大きな「システム」が待ち受けていて、仕入れ価格の大変動に翻弄される日々が続いていた。

 

この世界に、システムの「外」はありうるのだろうか……? 

 

なぜ、僕らはこれほどまでに働かされるのか?自分の頭で考える必要がある、と僕は思った。

 

資本主義社会のなかで「働く」ということ。

それをマルクスの『資本論』を読みながら考え、「菌の偉大なる力」に学びながら、新しい働き方に挑戦していく渡邉さん夫婦と「タルマーリー」の記録が、この本には書かれている。

 

nyaaat.hatenablog.com

ちょうど先日このエントリーでニャートさんが書かれていた、「実際に自分でルールを作って生きている人」にあてはまる人たちだなぁ、と思った

「腐る経済」って?

「腐る経済」という比喩が、正直ちょっとわかりにくいところがあるかなあと思ったのだけど…

 

わたしなりにものすごくかんたんに要約すると、

自然界ではあらゆるものは「菌」の営みによって、腐って土に還って、そして循環していくのがあたりまえ。

 

なのにお金は資本主義経済のなかで「利潤」を生み、「信用創造」や「利子」の力で増えていくばかり。(しかもそれを手にするのは資本家だけ)

 

この、腐らず増殖を続ける、というお金の性質が、今の資本主義社会のおかしさのモトなんじゃない?

 

じゃあ経済を腐らせてみよう!というのが、渡邉さんの考えだ。

(うーん、この比喩はやっぱり失敗している気がする。

利潤を出さない、搾取なき経営

いろいろ書いてあったけど渡邉さんの言う「腐る経済」って結局のところ、「利潤を出さない」ということなのかな、と思った。

 

資本家が利潤を追い求めるから、生産手段を持たない労働者は「労働力」を売るほかなく、働かせ続けられることになる。

 

パン屋で言うと、利潤を求めて生産性をあげるために、発酵の簡単なイーストを使う。(イーストは、その培養の仕方に問題があるとも言われている。)

そうなると、求められるのは職人の技術ではなく、ただただ単純労働をこなす人員となり、こき使われることになる。

技術を求められなくなった結果、労働者の給料は下がる。

 

 

……………………

笑っているのは誰か?

資本家だ。

 

技術革新は労働者のためのものではなくて、利潤を追求する資本家のためのものになっている。

 

このおかしなシステムの「外」に出るために、渡邉さんは「利潤を出さない経営」「搾取しない経営」を目指していく。

 

「利潤は、次の投資のために必要だ」という話をよく聞くけれど、それは結局、生産規模を拡大して、資本を増やしていくためでしかない。同じ規模で経営を続けていくのに「利潤」は必要ないのだ。

 

パンを媒介にして地域内で農産物を「循環」させる。「地産地消」で、地域の「食」と環境と経済とをまとめて豊かにしていく。 

 

「拡大」や「増殖」させ続けようとするのではなく、ほどほどの規模で「循環」させること。

それはとても健全で、まっとうなかたちだよなぁ、と思う。

 

自前でパン屋という「生産手段」を持って、「利潤」も「損失」も出さず、ただ「循環」させ続けて、地域全体を豊かにしていこうという渡邉さんたちの働き方。

すがすがしくていいなぁと思うけど、なかなかできることじゃないよなぁとも思う。

 

www.ikedahayato.com

イケハヤさんも「タルマーリー」について書いておられました。

月並みな言葉ですが「短期的なお金より大切なことがある」ということを、当たり前の価値観として受け入れて、事業を行っている姿にしびれました。金の亡者ですみません!

笑った。

 

まとめ

なんだか経済とかそっちの話ばっかり書いてしまったけど、この本は菌や酵母に関する話が単純にとてもおもしろかった。

菌も人間も、多様性を認めるということは難しいしラクなことではないけれど、それこそが豊かさを生み出すんだよなぁと思ったり。

 

 

「タルマーリー」はよく不思議なパン屋と言われるそうですが、この本も、菌の営みと渡邉さん夫婦の実践を通して働き方を考える、おもしろくもちょっと変わった本なのでした。