冬の余市蒸留所へ。予約なしで見学に行ってみた


ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝さんによって設立された余市蒸留所を見学するため、余市町にやってきました。
ただ、完全に思いつきだったので、見学予約はしていません。
ガイド付きツアーは基本的には3日前までに予約、ガイドなしの自由見学は予約なしでもできるとのことだったので、とりあえず行ってみました。
札幌から余市へは、JRで約1時間20分で到着。(札幌→小樽→余市)
乗換駅の小樽から先は、suica やpasmoなどのICカードが使えませんが、余市駅の窓口で清算してもらえるので大丈夫です。

こちらが蒸留所正門。駅からは徒歩2分!駅を出て、真正面のところに見えます。
蒸留所というと、奥深い山のなかの交通の便がわるいところにあるというイメージだったので、駅からこんなにすぐそばにあるなんて驚きでした。
蒸留所見学のようす

正門を入ってすぐ左手にある受付のところで聞いてみると、5分後にはじまるガイドツアーに空きがあるので参加可能とのこと。
冬の時期で、工場が稼働していないということもあって見学者が通常よりは少ないのかもしれません。
喜んで参加させていただきました。
見学者待合室

入り口でニッカのマスコットキャラクター、キング・オブ・ブレンダーズのローリー卿がおでむかえ。クリスマスバージョン、似合ってますね。




ウイスキーの製造工程や数々の受賞歴など、いろいろな展示を眺めながら時間が来るのを待ちます。
この場所からガイドツアーがスタートです。
乾燥棟(キルン)

待合室を出るとすぐに乾燥棟(キルン)があります。
ここでは、水に浸して発芽させた大麦を、ピート(草炭)や無煙炭をたいて乾燥させ、芽の成長をとめてモルト(麦芽)をつくります。
このときに、燻したピートの香りがモルトにうつって、ウイスキー独特のスモーキーな香りが生まれます。
蒸留棟

麦芽を乾燥させたあとの製造工程は糖化・発酵と続いていくんですが、建物の配置の関係により、先に蒸留棟へ。
6器ならんでいる単式蒸留器(ポットスチル)のなかでひときわ小さい、奥から3番目のものは創業当時につかっていたもので、当時はあの1つだけで蒸留をおこなっていたそうです。
現在は使われていません。

余市蒸留所は、世界でも今やここだけという「石炭直火蒸留」という方法を採用しています。
ポットスチルに直接火をあてるので、適切な火力をたもちながら石炭をくべなければならず、とても難しく手間のかかる作業なので他の蒸留所ではもう行われていないそうです。
でも、手間はかかっても、余市モルトの重厚さや力強い風味を引き出すにはこの作業が不可欠なのだとか。
この日は工場が稼働していませんでしたが、稼働している日は、職人の方が実際に石炭をくべているところが見られるみたいです。
くぅ。見てみたかった。
ポットスチルの先にしめ縄が巻かれているのは、竹鶴政孝さんの実家が造り酒屋だったことに由来しています。
「いいお酒ができますように」という願いがこめられているんですね。
粉砕・糖化棟

アーチのむこうにありますが、入れないのでここから見るだけでした。
乾燥したモルトをここで粉砕し、細かくなったモルトを65℃前後の温水とゆっくり混ぜ合わせます。
するとモルトのなかの酵素の働きで、甘い麦汁ができます。
発酵棟
写真を撮り忘れてしまいました…。(なんせすごい雪だったんですよ…と言い訳)
ここでは、濾過した麦汁に酵母をくわえて発酵させると、糖分がアルコールに分解されて、アルコール分7~8%程度の発酵液ができます。
この発酵液は、最初の方に見学した蒸留棟のポットスチルに送られ、蒸留されます。
旧事務所

中に入ることはできませんでした。

昭和9年に建てられた竹鶴の事務所は、いまでは余市町の指定文化財となっています。
ここから日本のウイスキーの歴史がはじまったんですねぇ…。
リタハウス

工場設立当時からこの場所にあり、事務所や研究室として使われていたそうです竹鶴政孝さんの妻、リタさんの名前にちなんで現在は「リタハウス」と名付けられています。
こちらも見学は外観のみ。
と言ってもかなり雪におおわれています……。
旧竹鶴邸

政孝さんととリタさんが実際に住んでいた家を移築・復元したもの。
一見洋風の家に見えますが、二階の窓からは障子が見えたり、玄関先には石灯篭が置かれていたりと、和洋折衷のつくりになっています。
……と言ってもこれまた雪であまり見えないわけですが……(汗)
冬はずっとこんな感じかと思うとなかなか大変ですね。
一号貯蔵庫


その名の通り、一番最初に建設された貯蔵庫。
こうして見ているとわかりませんが、この貯蔵庫の奥行は50mもあるそうです。
ここではアルコール分63%程度に調整した蒸留液を、樽につめて長期間熟成させます。
最初透明だった液体は、ここで樽材の成分や、気温、湿度などさまざまな影響を受けて、琥珀色のおいしい飲み物に変わっていきます。
ですがその過程では、1年熟成させるごとに、蒸発して元の量の2~3%が失われていきます。
20年熟成させた場合、なんと失われる量は半分!
この蒸発して消えていくウイスキーのことを、「エンジェルズシェア」(天使の分け前)と言います。
*****************
これで、ウイスキーの製造工程の見学は終了です。
あとはウイスキー博物館見学ののち、ニッカ会館での無料試飲が待っています。
このウイスキー博物館が予想以上に見どころがたくさんあって、じっくり見たい人はここだけでも1~2時間はかかるのではないかと思いました。(有料試飲コーナーもありますし)
ウイスキー博物館でウイスキーについて学ぶ
ウイスキー貯蔵庫を改装してつくったものだそうです。
ウイスキー製造について、竹鶴政孝とその妻リタさんの人生について、ニッカの歴史についてなど、ガイドツアーだけではすべてを見るのは難しいほど多くの展示がある、楽しい博物館でした。

入り口には、一枚の銅板を職人が手で打ちつけることによってつくられる、ポットスチルが鎮座しています。
底の方は直接火に触れるので下の方は厚く、上に行くほど薄くなっていることが、コンコンと手でたたいてみるとその音でわかります。


樽をつくるのも大変ですね。

こちらは昭和15年に発売された、第一号のウイスキー。
格子模様のよう見えるボトルは、実はそれぞれの面に刻まれているのは右上から左下への一方向の斜線のみ。
それが重なって、格子模様に見えるというなんともオシャレなつくりです。
竹鶴政孝さんにとって、自分の子供をはじめて世に送り出すという気持ちであったため、大事に着物を着せてあげたいという願いをこめてこのデザインになったんだそうです。
ニッカウヰスキーには、こういうウイスキー愛にあふれるエピソードが本当にいたるところにあって、竹鶴政孝さんの熱い思いが伝わってきます。

竹鶴政孝さんは職人気質のウイスキーバカ(失礼)だったのかと思いきや、ゴルフに卓球、狩猟など、けっこう多趣味な方だったようでなんだか意外です。
こんな大きな熊も仕留めていてすごい!

NHKの朝ドラ「マッサン」で実際に使われた衣装などもいくつかありました。
正直このドラマでは、サントリーの創業者である鳥居さんをモデルにした鴨居さん(堤真一)の方がかっこよかったですけども…。

有料の試飲コーナーもあります。

個人的におもしろいなーと思ったのは、過去のテレビCMが流しっぱなしになっていたものでした。(全部見ると約70分ほどかかる)
今ではウイスキーといえばすっかりハイボール、という感じになってますが、その時代によってどんなふうにウイスキーを売り出そうとしていたのかの変遷を見るのはなかなかおもしろかったです。
上の写真のように、家で夫婦でゆっくりウイスキー……ってCMは今じゃちょっとイメージできないですもんね。
他にもたくさんおもしろい展示があったので、ツアーのあとにじっくり見るのがおススメです。
ニッカ会館(無料試飲会場)でゆっくり試飲


シングルモルト余市、スーパーニッカ、アップルワインの3種類が試飲できました。
自販機でチョコレートやジャーキーなどのおつまみも売ってます。
ジャーキーがおいしかったです。

ここにも竹鶴さんのこだわりに対する説明が。
本当に細部までこだわっていますねー。
ここまで、ガイドツアーはだいたい1時間ほどで終了です。
限定ウイスキーが気軽に飲めるレストラン「樽」

すきっぱらにウイスキーを流し込んだので調子づいて、さらに飲むべく行ってみました。



町のバーで飲むことを考えると、とてもリーズナブルな値段設定となってます。

まずはラムしゃぶをハイボールとともに。
お鍋の中にあるのはワインとウイスキー。それに薄切りのラム肉をしゃぶしゃぶさせて、ポン酢とごまだれでいただきます。
ウイスキーのほうは期待していたほど香りは感じませんでしたが、ワインはちゃんと香ってました。
ラムしゃぶってはじめて食べたけどおいしかったです。

食事のあとは、余市蒸留所限定ウイスキーの飲み比べセットを頼んでみました。
燻製カマンベールチーズとロイズのチョコレートがついて980円はお得です。
見学者が少ない冬の時期のお昼過ぎということもあり、レストランはとても静かで落ち着いた雰囲気でした。
時間が許すなら2時間くらいぐだぐだここで飲んでいたかったです。
窓から見える雪景色も、雰囲気があってとてもステキでした。
余市蒸留所限定ブレンデッドウイスキーを購入

最後に、売店でお酒を購入。
「マッサン」でのウイスキーブームや、世界的にも日本のウイスキーが人気ということもあって、原酒不足なのでしょう、売店の棚がスカスカになっているところもありました。

「余市蒸留所限定 ブレンデッドウイスキー」
500mlで約3000円ほどと、他の限定モノよりも手ごろな値段だったため、おみやげ用(もちろん自分も飲む)として購入しました。
水色のさわやかなパッケージと、少し小さめのボトルがかわいいです。
味は、とても飲みやすい!さすがブレンデッドといった感じです。
パッケージに合ったさわやかで軽い感じの口当たり、まろやかな甘さと、後味に少しピートも感じます。
個性的でありながらもクセがなくとにかく飲みやすいので、ストレートにもハイボールにも、どんな飲み方にも合うウイスキーだと思いました。
おみやげには最適の一本です!
ちなみに、限定ウイスキーはネットで探すとここで買う3倍くらいの値段で売られていたりします。
なので、迷ったら買った方がいいです!
まとめ
本当に見どころが多く、マッサンのウイスキー愛がひしひしと伝わってきてとても楽しい、満足度の高い蒸留所でした。
雪におおわれた蒸留所も味があってとてもよかったんですが、次回はもっと暖かい季節の、工場が稼働しているときに行きたいと思います…!
ニッカのホームページです。
宮城狭蒸留所にも行きました。
スコットランドの蒸留所にも行ってます。
ススキノで飲みました。
コメント