男性にこそ読んでほしい本
タイトルおよび、『昭和元禄落語心中』でおなじみの雲田はるこさんの美しい表紙絵と扉絵にひかれて買いました。
痴女ものAV監督として、マゾ男性や女装美少年の肛門をほぐし続けてきた二村ヒトシ。
ボーイズラブと腐女子文化の研究者として、二次元のやおい穴を掘り進めてきた金田淳子。
同じく腐女子で、前職の編集者時代にはアダルトグッズ業界を取材してきた岡田育。
この3人による共著です。
わたし自身は特に腐女子というわけでもなく著者の誰のこともよく知りませんでしたが、3人の会話はとてもくだらなくて(褒めてます)、ときに本質をついていて楽しく読みました。
そしてこれは腐女子や女子だけでなく、男性にこそ読んでほしい本だと思います。
「男は、自分の体が性の対象になるということにまったく慣れていない」
わたしがこの本のなかで最も印象的だったのは、二村ヒトシ監督の言葉です。
男は、自分の体が性の対象になるということにまったく慣れていない。そして男にとって自らのペニスであれば安心して能動的に快感を味わえるんだけど、アナルはそうじゃないんです。コントロールすることができない受動的な快楽に身をまかせることになってしまう。だからそれを嫌がって出演を拒む男優さんもいます。
(中略)
出演してくれた男優さんも「気持ちよかったけど恥ずかしいから(あるいは、気持ち良すぎてつらかったから)もう勘弁してください」という人と、「やられたことによって女性の気持ちがわかるようになりました。明日から女優さんにもっと優しくなれます」って言ってくれる人とに分かれます。後者の男性の方が、さらにセックスがうまくなると思うんですよ。
なるほど、多くの男性たちにとってセックスは主体的、能動的に行われるものという認識なのかもしれません。
でもこれって支配欲にもつながるし、痴漢やレイプなどの性犯罪にもつながる話だよね……と思いながら読み進めると、本の最後のほうで著者の3人が、
性犯罪者にはアナル開発をすればいいのでは?ということを話されていました。
性犯罪者だけではなく、男性がそれをすれば女性の身体に対して当事者意識が持てるようになるし、攻撃性も抑えられて世の中平和になるんじゃない?と。
冗談のようでけっこういい案のような気もします。
まぁ男性はイヤかもしれませんが…。
好奇心と勇気がある、もしくはもっと女性のことを理解したいという男性にはぜひ試してほしいところです。
めちゃくちゃ気持ちいいらしいですし。
そういえば何の本だったかは忘れてしまいましたが、ノンフィクション作家で海外のいろんな場所へ出かけている高野秀行さんが、
海外滞在中に出会ったある男性がものすごく親切に面倒を見てくれたのだけど彼はゲイで、その親切には下心が感じられて恐怖を感じたのと同時に女性の気持ちがわかった、というようなことを書かれていたのを思い出しました。
性的に魅力を感じない相手から、性的なアプローチをしつこくされることの気持ち悪さや、
その相手が自分よりも身体的に強いということからくる恐怖みたいなものって、たしかに多くの男性は、普段ほとんど感じることがないのかもしれません。
うーん、そう考えると、やっぱりすべての男性に試してほしいですね、アナル。
本書は後半、日本三大マゾの一人だという方やゲイの方をまじえての話もあり、普段考えたことのない角度から性について考えるきっかけになるので、新鮮な驚きがあります。
とりあえず、まずは彼氏に読ませてみようと思います。
(追記)
彼氏は、前半のあまりに長い「穴談義」に飽きて途中で投げ出してしまったようです。
たしかに前半、著者の3人も自覚されているようにアナルにページを割きすぎです。
その後、ゲイバーにハマっているストレートの男性にこの本をあげたところ好評でした。
読み終わった彼は、ゲイバーで働く男の子がこの本に興味を示したのであげたとのこと。
わたしがあげた本、新宿2丁目を旅しているようです。
雲田はるこさんの描く人物はなんとも色気があって良いですね。
そしてAV監督の二村ヒトシさんの本もいろいろと気になる。
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